Scrum Fest Osaka 2021 基調講演を聞いて
今年もSFOに参加しています。 1日目は楽天の椎葉さんによる基調講演「誰も嫌な思いをしない変化」を聴きました。
講演メモ
エンジニアのスキルアップのためのチーム支援
あるチームのエンジニアのスキルアップのために支援を依頼された。
チームを観察して、「いいチームですね」という感想をマネージャーに伝えた。
サービスを良くしたいと改善意欲がある。
気持ちや行動がきちんと噛み合う仕組みがあればうまくいくと考えた。
1年間実践をして、変化して、従業員満足度も上がった。
誰も嫌な思いをしない変化
支援にあたって「誰も嫌な思いをしない」ことをミッションとした。
スクラムって難しい。小学生の方が上手くできるかもしれない。
スクラムは問題を解決してくれるわけではなく、現状(問題・課題)を見えるようにするだけ。
変化を起こすことは最適化されたこれまでのやり方に向き合う必要がある。現状をうまくいくように変化させるところに嫌な思いが発生するのではと思う。
人の行動を変えていこうとアプローチしても一進一退。椎葉さん自身「なんでわかってくれないんだろう」とか「この会社でスクラムやるのは無理だ」と思っていた。
でも変われた。「そっかー」と思えるようになった。
相手に期待をしなくなった
期待に届かないときのイラッとすることが、教えてあげるという気持ちを消してしまう。
期待することが、「残念な気持ちになる」「相手に問題があると考えてしまう」
相手ができることを見るようになった。
相手の気持を考えなくなった
相手の気持を想像しなくなった。相手の気持に合わせて自分の行動が変わってしまうから。かわりに、相手の言葉や行動を見るようになった。
相手の気持に向き合わなくなった。答えてあげないといけない、導いてあげないといけないという、自分が行うことができるかということにフォーカスしてしまうから。かわりに、相手に寄り添うようになった。
実践したこと
観察
事実をみる。
事実の中に想像が入り込んできがち。わからないことは行間を読むのではなく相手に確認すること。
できていることを見る。
つい、できていないことを見てしまいがち。それは、期待があるから。期待と事実の差分を見てしまう。今、できていることを見る。
考察
流れを見る。
前に無理やり進めても流れに押し戻されてしまう。いま、どういう力が働いていまここにいるのかな?と問いかける。
宿題をしない子供に対して命令しても、否定しても、宿題が終わるわけではない。頭と心は別だということ。
前に進まない原因になっている流れの方を見る。
視野を広げる。
流れを見て原因がわからない場合、その外側にあるものの流れが原因であることがある。
選択
「前に進むか?」を自問自答する。
正しさを主張したいだけでないか、指摘したいだけではないか、相手を論破したいのではないか、などなど。そんなときはチョコ食べて一呼吸おく。一晩寝かせる。
選択の結果が期待値と異なったときには、別の流れがあると理解する
改善のための流れ
忙しいことでスキルアップのためのゆとりが無い。
プロジェクトの並行実施をやめる、攻めの計画を見直すなど、年間計画の大幅な見直しを決断してもらった。
できていることを見る
苦手なことは苦手なままでも良い。チームでカバーできていれば。
誰も一人にしない仕組み
バディ形式にして、POもSMも二人にした。
マネージャーがスクラムマスターとして活躍している。チームというプロダクトを良くしている。
いいチーム
貢献したい気持ち、サービスを良くしたい気持ちを持っている。
仕組みを改善していく仕組みもチームに組み込まれている。
嫌な思いをしてほしくない人
自分自身。
自分の気持を変えることをしないですむように仕組みをつくる。自分の行動を変える。
前に進むための選択
変化はつながっている。突然変化は起きない。
できることを見て積み重ねる。ちゃんとしたスクラムから遠くても。
どうしてスクラムって呼びたいの?
恩送り。10年前にスクラムのおかげで一歩踏み出せた。
先輩たちから受け取ったものを次の人におくりたい。
感想
今年度に入って役割を変えた自分にとって、とても大切な示唆をいただける講演でした。自分がマネジメント職(見習い)になり、メンバーの支援や育成に注力するようになると、自らに課せられた責任や目標に対して、メンバーへの期待が大きくなりがちで、できていないことにとらわれてしまうことが多かったです。また、それを「正して、導いてあげなければ」という思いでいたのもそのままでした。
また、例え話が育児に関することなので、「わかるー」の連続でした。 「自分を変える」というのはわかっていても「何で自分が」という残念な気持ちがあるのもまた事実です。そこを「自分の行動を変える」とすると「できそうかな」と思えるのと同時に、自分の気持ちも変に捻じ曲げたり、圧がかからなさそうで良さそう。
お話しいただけた内容(観察・考察・選択)は、フレームワークっぽい(OODAとか)だけど、椎葉さんならではのコツというかエッセンスがあって、「やれそう!」と思わせてくれるところが良かった。五感をフルに使って、かつ、自分の気持ちにも向き合う必要があるのでなかなか大変そうではありますが。
最後に、サービスの改善に向き合って真摯に取り組めるチームが素敵です。人(の行動)を変えたり、プロセスを変えたり、ツールを変えたりして、変化を起こすことの目的がはっきりしているからこそ、やり遂げられたのかなって思いました。
2日目に向けて
今の自分やチームが前に進めるように学びたい。