マネージャー向けのセミナーということで、今期からマネジメント職にウェイトを置いて行こうとする自分にぴったりだと思い参加しました。
アジャイルを社内に広めていく推進者にもなったので、「現場はウォーターフォールから変えられないよ」というチームにプロセスやプラクティスだけでないアジャイルなマインドセットを根付かせていきたいと考えており、その観点からも期待しておりました。
感想
ロッシェルさん、川鯉さん・尾澤さんのセッションを聴講。リーダー・マネージャーとしてのスキル、振る舞いやメンバーの学びを促進するためのワークなど良いお話を聞けました。
— m-ono (@msts_0w0) 2021年5月12日
岡島さん、黒田さんのセッションは動画視聴します。
全部上司に見せたい。
#アジャイルマネジメントセミナー
私が期待していた観点から育成やリーダーシップのセッションを聴講し、学習とモチベーションの相関や理論的な学び方を知ることができて最高でした。
基調講演から各トラックのセッションの流れでWhy・How・Whatのように抽象から具体に綺麗に流れていきスッと腹落ちする感覚を得ました。
咀嚼してチームに伝え、対話することで、さらに熟達を進めていきたいです。
基調講演 アジャイルと現場力
株式会社シナ・コーポレーション代表取締役 遠藤 功 様
VUCAの時代を生き残るために
- 未来が読めない
- 中期経営計画早めようという会社が増えている
- 3年後の計画を立てても意味がない・合理性がない
- 中期経営計画を立てるエネルギーが大きい、コミットしろと言っても無理
- 自社の未来像(10年規模)を示してそのゴールに向かって進む。長期のビジョンが必要
- 答えがない
- 実行しながら答えを見出していく。早く失敗して、早く学習・改善する
- これが日本の企業はできない
- 完璧主義と減点主義の大きな壁
未来をどのように実現するか
ありたい姿・あるべき姿(理想)に対して、現状からこつこつできることを積み上げる(Present-Push)アプローチを日本は得意としている。
ビジョンを実現するために何をやるか(Future-Pull)のアプローチが必要。日本人は得意ではない。これがいわゆる「Backcasting」
トヨタのBackcasting
20年前(2020年)にグローバル15(世界で15%のシェアを取る)を掲げたからの今がある。 2040年にはMaaSの会社へ変身するというビジョンを掲げている。 今必要かどうかではなく未来の姿を実現するために何をするかを考えている。
日本企業に求められていること
生まれ変わる=Re-born
コロナに直面して必要性を実感するが、本当はもっと早く対応が必要だった。柔軟・機動的な経営が求められる。
コロナ・ショックをコロナ・チャンスと捉える。これからの5~10年が転換期。
競争戦略とオペレーション
価値を再定義する。 「我々は何者なのか・我々の価値は何か」を問う。
事例1:ドイツバーン(ドイツ鉄道)
- 旧:Station to Station トレインオペレーター
- 新:Door to Door モビリティマネージャー
事例2:SOMPO
- 旧:保険の会社
- 新:安心・安全・健康のテーマパーク
競争力はどこにあるのか
競争力は中期経営計画書や本社の会議室にあるわけではない。競争力は企業活動のオペレーションの現場にある。ビジネスモデルを真似されても、実行力・現場力で勝つ。
実行の時代
卓越した実行能力を持つ企業のみが生き残る。戦略は真似できても、ケイパビリティはかんたんには真似できない。最も重要なケイパビリティがAgility。
まず、やってみる。早く失敗し、早く学ぶ。完璧主義・減点主義から脱却する。
SOMPOのスプリントチーム
- DXを手作りで推進するチーム
- デジタイルカの企画・開発を自社内で完結
- エンジニアやUIデザイナー50名超のチーム
- 新たなサービスやアプリをクイックに制作
- 1~2周間で機能設計し、継続的に改善
- これまで70件のPoCを手掛け、10件以上サービス化している
逆ピラミッドの三角形を動かす
現場が主導してアジャイルになり、本社や経営陣が支援する。サービス業や小売業ほど進んでいる。
地域のスーパーは元気!それぞれの店舗に権限移譲して、店舗主導で改善を継続している。
個店主義 VS 本部主義
生まれ変わるとは
未来に選ばれる会社になるということ。 過去・現在に選ばれていることは、未来に選ばれることを保証しない。
QA
ローカルスーパーがそこに至るために何をやったか
- 意識の問題が相当違うのではないか?
- ローカルスーパーの店長は経営者である
- 大手スーパーの店長は中間管理職
- 大手スーパーも権限移譲しているが、権限を使わない
- 自分で決めない。本部の了解をとってしまう。
- 時間がかかってしまう。
- 現場に失敗する権利を与えている
- トップからメッセージが出ないとだめ。
- トップは言っているが、中間管理職が失敗を許さないということがネック。
パーパス経営と言われているが
- パーパスは普遍的・一般的であることが多い。共感されるものである。
- 経営者が本気で言っているかどうかが大事。そうすれば社員は共感する。
- それだけの熱を持った経営者がどれくらいいるか。。。
アジャイルチーム運営しており成功しているが、最後の壁(経営層)をどうするか
- 分社化してイケているチームが経営する
- 事業特性・人事・規約など何もかもが違うのであれば会社を分ける必要がある
- それが最も合理的であり、そうしないと大化けしない。
- スピンオフ!
アジャイルの成功を支えるサーバントリーダーシップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長 ロッシェル・カップ様
基調講演の現場力・逆三角形組織との親和性が高い
日本の企業を手伝うと、他の文化だけでなく企業の文化が大切
8つの文化的習慣
simplearchitect.hatenablog.com
- Be Lazy:最小の努力で、最大の成果を出す。エッセンシャル思考。
- リスクや間違いを快く受け入れる
- 不確実性を受け入れる
- サーバント・リーダーシップ
- セルフマネジメントチーム:自己組織化されたチーム
- 従業員への信頼:Netflixの人事が話題になっている
- 個人の自信
- 階層関係のパワーバランス:お客様との関係をパートナーシップ
セルフマネジメントチーム
- 仕事に対して自分たちで考え・決断するチーム
- 仕事の計画・コントロール・改善を行い、問題解決の責任も持つ
- チームがマネジメントするとマネジャーの役割は何か?
- マネジャーはメンバーのコーチングと育成、ビジョンを伝え導く
サーバント・リーダーシップ
- 影で黒子のように支援する人
- リーダーが逆三角形組織の一番下にいる
- BOSSではなくLEADERになる
- ビジョンを明確にし、目標の意義を伝え、パッションを持ってもらう
- プレイングマネジャーではない
- 一緒に引っ張るのではなく、そばに寄り添って支援する
何を行うか
- チームへ支持するのではなく、チームのサポートに集中する
- マイクロマネジメントしない
- 権限移譲する
- チームの障害物を取り除くのを助ける
- 優れた「聞く」スキルと「フィードバック」スキルを持っている
- 従業員が神経質になる過度な批判や過大な要求をしない
どんな人か
- エリート選手のコーチみたいな存在
- アドバイスやフィードバック、環境を整えて支援する
- 外部からはいってくるチームの障害になるようなものを守る
サーバント・リーダーシップのインパクト
40年以上前にIBMを退職した人がサーバント・リーダーシップのコンセプトを作った。シリコンバレーでの導入が進んで、大学の研究が進み、論文にもなっている。その論文で発表されたインパクトが下の通り。
- 会社のパフォーマンス(収益改善)
- チームのパフォーマンスが良くなる
- カスタマーサービスの向上
- 従業員満足度と、仕事への満足度(エンゲージメント)の工場
- 従業員のクリエイティビティ向上
- 従業員の助け合いの度合いの向上
サーバント・リーダーシップがイノベーションの環境を作る。
サーバント・リーダーシップによる行動・スキル
サーバント・リーダーシップはソフトスキルである。
多くの企業では、昇格させる場合に仕事の能力(ハードスキル)で決定する。上手なリーダーになるためには対人関係スキル(ソフトスキル)が必要である。
- Listening:聞く力、上手な質問の仕方
- 傾聴力
- Awareness:気づく力、歩き回りによる管理
- 現場を見る
- Empathy:共感する力、多様性尊重
- 観察力
- Foresight:予見する能力
- いろいろな可能性を描く
- Conceptualization:概念化する力、ビジョンの示し方
- リーダーは時間をもらって長期的なビジョンを考える時間を作る
- 戦術ではなく戦略を考えて伝えることが重要
- Commitment to the growth of people:人間的成長を助長する力、フィードバックの伝え方
- Healing:癒す力、Win-Winの交渉術
- Persuasion:説得する力、意見の述べ方
- Building community:チームビルディング
- Stewardship:長期的な考え方
- SDGsが人気ですが、そのことに当てはまる。
- 長期的に持続的に社会に貢献する
やるべきこと
- 従来のマネジメントは、現代の知的労働にマッチしていない。
- 今までやってきたことを変える必要がある
- スキルを磨くこと
0からわかる部下が自律的に学んで成長する環境づくりの方法 〜 学習科学の理論をベースに 〜
永和システムマネジメント・コーチ 川鯉 光起様
1on1を用いた組織支援コンサルタント 尾澤 愛実様
職場における上達とは
事例
仕分けをしていく中で最適解を生み出していく熟練
- 定型的熟達
- 決まった作業や仕事をより早く、正確にできる
かつおのたたきを作る手順の理由を理解していると別の方法を見いだせる熟練
- 適応的熟達
- 状況に応じて知識や技を組み替えたり、新たな手順や方法を行う
学校での学びは定型的熟達になっているケースが多い
- テストのための勉強
- 正解がある
- 時間制限や点数が求められる
こちらに慣れてしまうと適応的熟達になかなか向かうことができない
アジャイル開発における熟達者の行動
どうすれば適応的熟達者になるのか
- 未知の問題に取り組むこと
- 複数人で話しながら解決を試みること
- 聞かれると分からない、説明を求められるとできない状況に気づく
- 人の知識と理解のモデル
- レベル1:経験則、素朴理論
- レベル2:わかりやすい説明が生むバブル型理解、対話によって生まれる
- レベル3:学校で教える原理原則、科学的概念
- ペアプログラミングそのものである。
- 成果を出すことに対して、切迫していないこと
- 組織が理解することを重視していること
- 挑戦による失敗に対しての称賛
会社で実践できる具体的な施策紹介
未知の問題について話し合うワーク
- 5分:議題のテーマ決定
- 5分:個々に課題について考えてみる
- 15分:どのように考えてきたかを発表し、疑問点などを質問していく
- 25分:その課題を解決するための障害や心配事などを挙げる
- 10分:改めてチームとして、個々としてできることを考える
ポイント
- 無理やり答えを収束させようとしない
- 未知の問題選ぶときに難易度が高すぎないようにすること
クイズ作成/クイズ会
題材を選ぶ
- 3分:グループ分け(2~3人) 知識レベルが近い人同士のグループだと効果的
- 12分:クイズ作成 チームごとに問題と想定回答を2~3問作成
- 説明を促すような問題が良い
- 25~45分:クイズ会
深める読書会 簡易版(ジグソー法をアレンジ)
モブワーク質問チートシート
ツッコミ役をローテーションする
- 同定:どこの範囲を試すのが良さそうかな?
- 疑問視:今わからないことはなんだろう? 気にしているのはなんだっけ?
- 探索:関係しそうな仕組みはどこかな? 他に関係していることはありそう?
- 提案:どこが一番関係するだろうか?
- 確認:これで問題ないかな?
適宜、質問・批判を行い対話する:誰も疑問は無いかな? 全部に対して問題ないかな?